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Channel: Cambridg Diaryケンブリッジ日記:三戸浜(海岸)編
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マリインスキー・バレエ白夜フェスティバルが幕を閉じる。

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ボリショイ・ロンドン公演の新しい劇評を和訳する前に、ファイナンシャル・タイムズ紙に掲載された、マリインスキーの白夜フェスティバルのレビューを和訳しました:
 
 
White Nights Festival, Mariinsky Theatre, St Petersburg – review
マリインスキー劇場での白夜フェスティバル‐レビュー
 
Glimpses of excellence couldn’t mask worrying signs that quantity is in danger of overshadowing quality at the Mariinsky Ballet 一見素晴らしく見えても、公演数が多すぎて、質の劣化危機懸念を隠すことはできない
 
「ロンドンがボリショイとの関係を再燃させている一方、サンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場は多忙だった今シーズンの終わりを迎えている。今年5月に、クリュコフ運河を挟んで旧劇場の向かい側に、当初予算の10倍以上もの費用で建築された現代的なマリⅡ劇場は、こけら落としを無事終了した。ありきたりなライムストーンとガラスの外装は、振り返ってみるほどではないものの、ゲルギエフの頑張りで、とにかく毎日のように出し物がある。
 
マリインスキー・バレエにとっては良いことばかりではない。ゲルは年間1000バレエ公演(ボリショイの2倍だと自慢している)を行うと発表し、新たに60人ものダンサーを雇う計画だそうだ。最優秀のワガノワ出身のダンサーは、うなるほどの数がいる訳ではないので、今年の白夜フェスティバルの最終週は、公演数が多すぎて、質の劣化危機懸念を隠すことはできなかった。
 
 2ヶ月間に渡った白夜フェスティバルに関しては、変わった設定としか言いようがない。初演がほんの少しで残りは常設展示の範囲内。しかしながら、例えば、最後の一週間はミックス・プログラムが二つ以上に加え全幕物が4作品と、全期間に渡り詰め込んだ内容だった。昨年度、過酷な労働条件に対する苦情を盛り込んだダンサー組合のオープン・レターの内容と整合性のあるフェスであったと言えよう。
 
マリインスキーの歴史的なシンボルで看板の群舞であるが、覇気がなく、もっとリハーサルに時間をさくべき。クラシック作品でのむっつり顔ダンサー、スペース取りやタイミング、そして踊りのシンクロに問題アリ。海賊の想像上の花園シーンやドンキの森のシーン、オダリスク場面など、マリがこれまでみせてくれたものと比べると、まるで質の悪いマネのよう。
 
マリⅡ劇場でのミックス・プログラムは、更に疑問を呈した。フォイエーは、金色の木と薄い色のオニキスと曲線で、美しい北欧風のスペースで、オーディトリアムは21世紀の現代風。マリⅡのステージはバレエに適しているとは言えず、一定ではないスタイルと力の入らないダンスからなる安直なプログラムは、マリのステージ文化には遠く及ばない残念な変化である。(← 「海賊」からの花園シーンとパ・ド・トロアが一緒くたの変なパフォーマンスとか)まるでマリインスキーが観光客向けのアトラクションとして変貌を遂げるために観客にコビているよう: サーカスじゃあるまいし、高く飛んだら大拍手、といった、まるでディズニーランド訪問記を書くためにスマホやカメラで撮りまくりといった感じ。
 
マリにはたくさん才能のあるダンサーがいるのに、なんでまたこんなことが起きるのか?特に本劇場では、公演ごとに素晴らしいパフォーマンスがみられる。エフセーエワが第一幕でスピードと演技力をみせつけたとドンキなどよい例だ。ヒョウのごとくのジャンプと真の優雅さを備えた、最近韓国から入団のキム・キミンのバジーリオも同様に素晴らしかった。
 
キムは、フェスの最終パフォーマンス、海賊でも男性舞踊手代表としての責務を果たし、ベテランのコルスンツェフも口髭はやしたユーモアたっぷりのコンラッドだった。一方、バイムラドフとティモフィエフも、まるでマンガの悪役のように面白さを交えた好演だった。
 
ラブロフスキーのロミジュリは、華麗さから一休み、ここ数年の海外公演の時よりも断然良かった。オーソドックスではあるが、キャラクター・ダンスは、真のロシア魂をみせてくれたし、可憐なオスモールキナも疑問を払拭するジュリエットだった。彼女の純粋さは常に魔法のようであるが、第三幕では、新しい奔放さで最後まで(悲劇の)運命に対して抗っていた。 
 
将来有望なダンサーだって出番を待っている、ラティポフは、海賊のパ・ド・トロアのアリ役で颯爽とデビュー。しかしながら、ダンサーは工場で大量生産とは行かず、かつての金賞もののレベルに到達するには、もっと効率的な経営と詳細部分への気配りが必要だ。ゲルの傘下で可能なのだろうか?彼は、オペラと音楽にしか重きを置いていないし、「現行」バレエ監督のハゲに至っては、何を考えているんだかまるでわからない、といった有様だ。」
 

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